お菓子へのこだわり
当店のお菓子はシンプルなものが多いです。
それは複雑な構成のケーキでは自分の表現したいものが曖昧になってしまうからです。
素材の主張、バランス、テクスチャー、香りなど
より良い状態でケーキに落とし込むためにもシンプルな構成にしています。
その分、素材へのこだわりが少し強いかもしれません。
高級なものばかり使うわけではありません、お菓子に最も合った素材を使うので
あえて主張の弱いものを使ったりもします。
また使った素材の特性を十分に発揮させてあげるために製法にもこだわっております。
クラシカルな技法、最先端の技術や知識を取り入れ、最適な製法を日々探っています。
お菓子づくりに必要な化学的な解釈も日々研究しています。
そして出来上がったお菓子はもちろん、素材や生地、器具など自分のこどものように大事に丁寧に接します。
この姿勢は師匠の弓田亨氏の影響が大きいです。
開業する前に弓田氏のお店(イルプルーシュルラセーヌ‐代官山)で勉強させていただいていたとき
弓田氏が考える製菓理論に衝撃を受けました。
学校で習っていた理論とは解釈がことなり全く新しいことを学ぶ毎日でした。
そして弓田氏のお菓子づくりの所作をみて、作業を止めてしまうほど美しかったことを覚えています。
何十年も繰り返され、熟練された流れるような所作でありながら「慣れ」や「ダレ」を全く感じませんでした。
「雑」が入り込む余地がありませんでした。
愛でるように生地を扱い、その愛情を受けたお菓子たちが当然のごとく美味しくなっていくのを目の当たりにして
「お菓子づくりはこうでなくてはいけない」
「こんな愛情深い菓子職人でありたい」
と思うようになりました。
今のお菓子への姿勢はこの頃から形成されてきたように思います。
あとはデザインの面で簡素で素朴なものに魅力を感じます。
機能美とまでは言いませんが削ぎ落されたピュアなデザインが好きなのです。
自分は油絵の画家だった時代があります。
そのときの作品も空だったり生き物だったり自然物が多かったです。
派手な色彩を使っていてもどこか静かな印象を受けるものが好きでした。
そのときの感性が今のお菓子に反映されているように思えます。
特注やコラボ商品で鮮やかでにぎやかなお菓子をつくることはありますが
ベースとしては素朴なものを中心にお店づくりをしていきたいと考えております。